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キムチと肥満
はじめに,令和6年1月1日に発生した石川県能登半島を震源とする地震、および関連する事故により犠牲となられたすべての方々へ、お悔やみを申し上げます。また,被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。本学の有資格教員は,各種医療関連団体からの要請を受け,既に被災地や1.5次避難所に支援のため出向いています。石川県に居住する者として,被災地域住民に寄り添った復興支援を願うばかりです。
さて今回は,キムチの日常的な摂取が,男性の肥満リスクを全般的に低下し得るという韓国からの研究報告が,今年1月30日付のBMJ Open1)に掲載されたので,簡単に紹介したい。WHOは,肥満の定義を肥満指数(BMI)30 kg/m2以上とし,アジア人においてはBMI 25 kg/m2以上を肥満に分類している。肥満は,その原因に栄養・食生活などの生活習慣や環境因子が関連しており,2型糖尿病,脂質異常症,心血管疾患,慢性腎臓病などの慢性疾患の主要な危険因子となる。韓国の2021年肥満ファクト・シートによると,韓国の肥満の有病率は2009年の29.7%から2019年には36.3%へと着実に増加している。特に,年齢で20代と80代の肥満の有病率は他の年齢層よりこれまで低かったが,2009年から2019年の間に急増していた。肥満の増加は,慢性疾患の増加に関連し,結果として医療費の増大を招くことから,肥満を予防することは公衆衛生上の優先課題である。
キムチは,韓国で伝統的に食べられているおかずで,塩漬けにした野菜を薬念(ヤンニョム)とよばれる合わせ調味料をまぶして発酵させ作られる。日本でも馴染み深いメニューで,筆者はほぼ毎日のように口にしている。キムチは,低カロリーで,食物繊維,乳酸菌,ビタミン,ポリフェノールが豊富で健康的な食材である。中央大学校(韓国)のHyein Jung氏らは,韓国のThe Health Examinees Studyに登録された,40~69歳の対象者115,726人のデータを用いて,キムチ摂取と肥満との関連を解析した。解析の結果、男性では、キムチの総摂取量が1日1~3サービングの場合,1日1サービング未満の場合と比較して,肥満の有病率の低下と関連していた(OR: 0.875/1–2 servings/day, OR: 0.893/2–3 servings/day)。男性において,キャベツキムチの摂取量が1日3サービング以上の場合,1日1サービング未満の場合と比較して,肥満および腹部肥満のリスクが10%低かった。男女ともに,大根キムチの中央値以上の摂取は,全く摂取しない場合と比べて,腹部肥満のリスクが低下し,逆相関関係を示していた(男性で8%,女性で11%)。但し,全ての結果において「J字型」の関連を示したので,キムチの過剰摂取は制限されるべきであると述べている。
わが国では,厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」(令和元年度)によると,20歳以上の人の肥満(BMI25以上の人)の割合は男性で33.0%,女性が22.3%となっている。年代別にみると,男性では40歳代が39.7%と最も高く,次いで50歳代が39.2%となっている。一方、女性は高年齢層で肥満者の割合が高くなり,60歳代で28.1%と最も高くなっている。WHOのデータをもとに,1975年から2016年における世界195か国,1億2890万人のBMIの動向を国別にまとめた報告2)よると,日本は肥満率が少ない国の32位(BMI25以上は27.2%)だった。韓国は,同48位(同30.3%)と世界的に見ても決して高くはない。長期的な肥満防止対策を考えた場合,食習慣の改善にキムチが一役買うかもしれない。
さて今回は,キムチの日常的な摂取が,男性の肥満リスクを全般的に低下し得るという韓国からの研究報告が,今年1月30日付のBMJ Open1)に掲載されたので,簡単に紹介したい。WHOは,肥満の定義を肥満指数(BMI)30 kg/m2以上とし,アジア人においてはBMI 25 kg/m2以上を肥満に分類している。肥満は,その原因に栄養・食生活などの生活習慣や環境因子が関連しており,2型糖尿病,脂質異常症,心血管疾患,慢性腎臓病などの慢性疾患の主要な危険因子となる。韓国の2021年肥満ファクト・シートによると,韓国の肥満の有病率は2009年の29.7%から2019年には36.3%へと着実に増加している。特に,年齢で20代と80代の肥満の有病率は他の年齢層よりこれまで低かったが,2009年から2019年の間に急増していた。肥満の増加は,慢性疾患の増加に関連し,結果として医療費の増大を招くことから,肥満を予防することは公衆衛生上の優先課題である。
キムチは,韓国で伝統的に食べられているおかずで,塩漬けにした野菜を薬念(ヤンニョム)とよばれる合わせ調味料をまぶして発酵させ作られる。日本でも馴染み深いメニューで,筆者はほぼ毎日のように口にしている。キムチは,低カロリーで,食物繊維,乳酸菌,ビタミン,ポリフェノールが豊富で健康的な食材である。中央大学校(韓国)のHyein Jung氏らは,韓国のThe Health Examinees Studyに登録された,40~69歳の対象者115,726人のデータを用いて,キムチ摂取と肥満との関連を解析した。解析の結果、男性では、キムチの総摂取量が1日1~3サービングの場合,1日1サービング未満の場合と比較して,肥満の有病率の低下と関連していた(OR: 0.875/1–2 servings/day, OR: 0.893/2–3 servings/day)。男性において,キャベツキムチの摂取量が1日3サービング以上の場合,1日1サービング未満の場合と比較して,肥満および腹部肥満のリスクが10%低かった。男女ともに,大根キムチの中央値以上の摂取は,全く摂取しない場合と比べて,腹部肥満のリスクが低下し,逆相関関係を示していた(男性で8%,女性で11%)。但し,全ての結果において「J字型」の関連を示したので,キムチの過剰摂取は制限されるべきであると述べている。
わが国では,厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」(令和元年度)によると,20歳以上の人の肥満(BMI25以上の人)の割合は男性で33.0%,女性が22.3%となっている。年代別にみると,男性では40歳代が39.7%と最も高く,次いで50歳代が39.2%となっている。一方、女性は高年齢層で肥満者の割合が高くなり,60歳代で28.1%と最も高くなっている。WHOのデータをもとに,1975年から2016年における世界195か国,1億2890万人のBMIの動向を国別にまとめた報告2)よると,日本は肥満率が少ない国の32位(BMI25以上は27.2%)だった。韓国は,同48位(同30.3%)と世界的に見ても決して高くはない。長期的な肥満防止対策を考えた場合,食習慣の改善にキムチが一役買うかもしれない。
【参考資料】
1)Jung H, Yun YR, Hong SW, Shin S. Association between kimchi consumption and obesity based on BMI and abdominal obesity in Korean adults: a cross-sectional analysis of the Health Examinees study. BMJ Open. 2024; 14: e076650.
2)https://ourworldindata.org/grapher/share-of-adults-who-are-overweight?time=latest