IME 特定非営利活動法人 医療教育研究所 代替医療情報 光本泰秀教授
39
COVID-19によるストレスと睡眠

北陸大学薬学部 薬学臨床系薬理学分野 代替医療薬学・実験治療学研究室 教授 光本 泰秀

 国内の累積感染者数が13,000人を超え(2020年4月28日時点の厚生労働省発表:13,576人),その勢いが衰えない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は,我々の生活を一変させた。ここで最も重要な点である重症化阻止に向け,現場の最前線で常にこの感染症と向き合われている医療従事者の皆様に心より敬意を表します。
 日本統合医療学会では, 4月27日に伊藤壽記理事長名で現況を踏まえた今後の活動について、会員向けに以下のような報告がなされた。

 「この度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は中国(武漢市)に端を発して,急速な広がりをみせ,ついにパンデミックとなり4月7日にわが政府からもようやく緊急事態宣言が出されました。現時点で、COVID-19に対する効果が見込める治療薬もワクチンもない状況下では、予防も含めたセルフケアが求められます。ここはまさに統合医療の出番かと思われます。そこで,当学会と致しましては,統合医療の各専門分野の方々から,公衆衛生学的な事柄に加えて,心身に対するアプローチ,すなわち食事・運動・睡眠などライフスタイルの改善による予防策からストレスマネジメントを含めたメンタルケアまで広くご意見を頂き,HP上で公開することになりました。」

 わが国の統合医療分野を先導する学会から,今後、国民に向け感染症予防や現在の社会状況からくる様々なストレスに対する緩和策に関して,有意義な情報が発信されることを期待したい。
 ここでは,海外から発信された情報について紹介したい。出典元は,米国にあるHealthline1)という健康維持や疾病予防に関する情報発信サイトで,ここからは科学的根拠を踏まえ専門家によるレビューを経て様々な情報が提供されている。最近では,世界的な感染拡大に伴いCOVID-19に関連した情報も多く提供されている。今回,その中で“Stress About COVID-19 Keeping You Awake? 6 Tips for Better Sleep”という記事に触れてみたい2)。COVID-19の感染拡大は,人々に過度な不安や心配を募らせ,そのことが睡眠に悪影響をもたらす。更に睡眠の質の低下は,免疫機能を低下させ感染リスクを高めると考えられている。2週間に亘り毎晩最低8時間睡眠をとった健康な成人は,毎晩7時間以下の睡眠をとった人に比べ,Rhinovirusに対する耐性が高かったことが報告されている3)。それでは,不安や心配の高まりによるストレスに曝されている状況下で,良質な睡眠を確保するためにはどのような点に気をつける必要があるのか,Healthlineの記事では下記の6つの点を助言として紹介している。

1.「定期的なルーティンを維持する」
  可能な限り日常の生活ペースを保つことを心がける。
2.「過度に昼寝をしない」
  通常の睡眠を妨げる可能性がある。
3.「運動をする(就寝前は避ける)」
  睡眠の質を高めてくれる。
4.「ニュースの取り込みを制限する」
  パンデミックに関連するニュースを制限する。
5.「就寝前の青色光を制限する」
  就寝1時間前は,テレビなどを見ない。
6.「過度のアルコールを避ける」
  安らかな睡眠を得られない。

 COID-19の感染拡大は,間接的に良質な睡眠を奪い,そのことがウイルスに対する耐性を低下させ,更なる感染拡大に繋がる可能性がある。今は,一人ひとりが自身でできることに努めることが,感染拡大を防止する上でも重要であると考える。

【参考資料】

1)https://www.healthline.com/

2)https://www.healthline.com/health-news/how-to-get-better-sleep-during-the-covid-19-outbreak

3)Cohen S, Doyle WJ, Alper CM, Janicki-Deverts D, Turner RB.
Sleep Habits and Susceptibility to the Common Cold. Arch Intern Med (2009) 169, 62-7.