IME 特定非営利活動法人 医療教育研究所 代替医療情報 光本泰秀教授
エクオールとは?

 エクオールは,大豆イソフラボンの代謝産物であり,大豆イソフラボンのヒトに対する効果に関与する物質の一つと考えられている。エクオールは,大豆イソフラボンの一つダイゼインが,腸内細菌によって代謝を受け,中間体のジヒドロダイゼインを経て生成される(図1参照)。その後,腸管から吸収され標的臓器で生物活性を発現するとともに,肝臓で抱合化を受け尿中に排泄される。一部は,胆汁と共に腸内に排泄され,脱抱合を受けて再吸収される(腸肝循環)。エクオールの作用としては,エストロゲン様/抗エストロゲン作用(パーシャルアゴニスト作用),抗アンドロゲン作用及び抗酸化作用が報告されている。エクオールを腸内で産生できるのは,日本人で約5割,欧米人では約3割にとどまっている。このように、大豆イソフラボンを摂取しても,腸内細菌の違いによってエクオールを産生できない人がいることが,大豆イソフラボンの効果が一貫しないことの一因になっていると考えられる。先述したように日本人の半数は,エクオールを産生できない。エクオールを産生できる人でも個人差や日間変動が大きく,日常生活の中でこのエクオールを一定に維持することは困難である。今年に入り,このエクオールがサプリメントとして摂取可能となったので,代替医療素材の一つとして注目されている 1)

図1.腸内細菌によるダイゼインの代謝

図1.腸内細菌によるダイゼインの代謝

 2006年に大塚製薬は,世界で初めてエクオールを産生する乳酸菌ラクトコッカス20-92株を発見し,その単離に成功した 2)。このラクトコッカス20-92株は,安全性の高い乳酸菌で,この乳酸菌が大豆イソフラボンの成分の一つであるダイゼインからエクオールを産生する。同社は,この菌株を用い大豆胚芽を直接発酵させ,S体エクオールを約0.5%含有する大豆胚芽乳酸菌発酵食品(素材名:SE5-OH)を開発した 3)。実際にエクオール含有食品の効果を検証する目的でいくつかの臨床試験が実施されているが,その期待される効果の一つに更年期症状の緩和がある。1日1回以上更年期症状のホットフラッシュ(ほてり,発汗など)がある,エクオールを産生できない45~60歳の閉経後女性を対象(解析対象者126名)とした臨床試験が,エクオールを1日10 mg摂取する群(エクオール群)とプラセボ群(非摂取群)の2群に分け実施された。12週間後,エクオール群では,プラセボ群に比べて,ホットフラッシュの頻度やその程度が有意な差をもって改善されたとの結果が得られた。興味深いことに摂取終了6週間後には,症状の有意な再燃が認められた 4)。プラセボ群では,このような効果は認められなかったことからも更年期症状に対する改善効果はエクオールの生物活性によると考えられる。
 エクオールは,上記の更年期症状に対する改善効果以外にも,骨密度低下抑制作用,抗動脈硬化作用,肌の老化に対する改善効果が認められているので,今後疾病予防や未病対策において有用な代替医療素材の一つとして期待される。

【参考文献】

1. 麻生武志,内山成人.ウイメンズヘルスケアにおけるサプリメント:大豆イソフラボン代謝産物エクオールの役割.日本女性医学学会雑誌.2012;20:313-332.
2. Uchiyama S, Ueno T, Suzuki T. Identification of a newly isolated equol producing lactic acid bacterium from the human feces (Japanese). 2007; J. Intestinal Microbiol (Tokyo) 21: 217-220.
3. Yee S, Burdock GA, Kurata Y, Enomoto Y, Narumi K, Hamada S, Itoh T, Shimomura Y, Ueno T. Acute and subchronic toxicity and genotoxicity of SE5-OH, an equol-rich product produced by Lactococcus garvieae. Food Chem Toxicol. 2008; 46: 2713-20.
4.Aso T, Uchiyama S, Matsumura Y, Taguchi M, Nozaki M, Takamatsu K, Ishizuka B, Kubota T, Mizunuma H, Ohta H. A natural S-equol supplement alleviates hot flushes and other menopausal symptoms in equol nonproducing postmenopausal Japanese women. J Womens Health (Larchmt). 2012; 21: 92-100.

2014/7/24